クリノ沢の含礫泥岩体-その3
で,この蝦夷層群中部層準最大のトリックスターである含礫泥岩体の中でも最大の謎(くどい ^^;)が,これなんですよね...
緑色岩礫ですが,外形がなんか変です.右上-左下に斜めに走る小さな正断層群で転位しているように見えますが,まあそれはそれとして,不思議なのはこのブヨブヨとした外形です.特に真ん中上部と右下が面白いので拡大してみると...
300万画素(!)のデジカメ画像を拡大したものなので,画像がすごく粗いのはご勘弁.
上は,真ん中上の部分ですが,まるで『粥状』というか,泥(・シルト)質基質とほぼ同じ程度の固結度・強度しかないものが混合しかけているように見えます.でも,これは緑色岩礫なんですよね.(当時)いくら変質で粘土鉱物ができて柔くなっていたとしても,これほどになるとはちょっと信じられません.
下は,礫の右下部ですが,泥質基質が緑色岩中に棒状に突入(projection)しています.それによるはぎ取り岩片が浮遊しているのがわかると思います.
その左方にも泥質基質の注入と思われるプールがあり,緑色岩礫の割れ目に沿って薄膜状に注入しているところも認められます.
デブリ・フローの中のブロックが破砕されてジグソー構造を作る程度のことはわかっていますが,いったいこんな ductility contrast の低い注入構造ができるもんなんでしょうか?
『たまたまそう見えるだけなんじゃないのぉ?』という疑い深い人(私もそうですが)のために,これらの緑色岩『礫』(BS)と基質(MX)の関係を顕微鏡で見てみると,やっぱりというか,こうなっています.
緑色岩礫は,その中に生じた微細すべりで転位しており,それに沿って基質が注入充填しています.それによって生じたはぎ取り岩片(中央上)も見えています.
礫と基質の関係はすべり面によるクリーンカットだけではなく,一部で礫の破壊・分解(disintegration)を伴った不完全な混合を示しています(中央右下).
これらのことは,緑色岩礫がけっこう柔かったというのもそうなんでしょうけど,『泥基質がある程度の過剰間隙水圧を持っていた』ということなんではないかと想像しているのですが.
そうだとすると,この含礫泥岩体は,単なる表成堆積物ではなくて,『貫入体=泥ダイアピル』である可能性を力弱く(!)提示したい,という気持ちもわいてくるわけです.
さて...真相は,どんなものなんでしょうか?
2012/04/23 13:06:25