クリノ沢の緑色岩礫岩脈





なんだか舌を噛みそうなタイトルですが...これも,クリノ沢の蝦夷層群を調べ始めた時,けっこう翻弄されたものです.

要するに礫岩脈,というか礫岩のシート状貫入体です.この写真を見る限りでは,タービダイト互層中の礫岩層で,少しレンズ状,くらいにしか見えないかもしれません.実際,下のアーティクルで書いたように,タービダイト層の下半部が緑色岩礫岩からなるものもあるので,そのバリエーションという見方もあり得ます.

まず断っておかなくてはいけないのは,上の写真では,写真の上が層位学的下位だということです.これは逆転しているというわけではなくて,水平に近い露頭とそれを見る視点に制限があって(要するに向こう側に立てない),こういう写真しか撮れないんですね.

その上でこの礫岩体をよく観察すると,その上面(写真の下側)で,タービダイト互層の層理面を低角に切断していることがわかります.礫岩体の形態も明らかに右に尖滅しかけていてクサビ状になっています.また,礫岩体上面はかなり凹凸があります(写真の中央右).このような上面の斜交関係は,堆積性の浸食作用では説明できません.




礫岩体の下面をクローズアップすると,右のようになっています.母岩の層理面に礫岩の薄層が入り込んでおり,要するに剥ぎ取り形態になっています.

もちろん,この礫岩体が重力流堆積物で,下面で底層を剥ぎ取った後に不完全に停止し(て圧密し)た,上面がレンズ状なのは層平行の剪断変形のせい...と見ることも不可能ではありません.
しかし,礫岩脈と考えられる礫岩体はこれ一つではなく,下のアーティクルの柱状図にもあるように,薄いものがたくさんあります.その中には,礫岩体がほとんど礫一個分の厚さしかないというものもあります.重力流とははなはだ考えにくい.

ということで,クリノ沢の蝦夷層群の基底直上には,変成緑色岩礫を含む礫岩脈(というよりシート)がたくさん貫入していると考えています.それがどんな意味を持つのかは...ちょっと考えがまだ及んでいません.もしかしたら,この次に書く予定の含礫泥岩体と関連があるのかも.

2012/04/12 13:28:08


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