クリノ沢の緑色岩砕屑粒子





さて...しばらくほおってしまったクリノ沢の蝦夷層群について再開したいと思います.

左の柱状図は,鳴島勤さんが最初に作った柱状図に私が現地データと共に手を入れて,その最下部に上アブカサンベ川の基底部をくっつけたものです.なかなか面白い柱状図だな...と自分でも思います.
ここではとりあえず,春別川層下部とした部分の真ん中付近のタービダイト互層について書き始めます.




典型的な岩相はこんな感じで,中層理~薄層理の明瞭な級化構造を持つ典型的なタービダイト互層です.
これだけ見ていると,砂岩も灰色で石英長石質で,まあ要するに普通であって何の不思議なところもないんですが...




多少厚層な砂岩層の単層下部に,緑色岩礫質部があるのが野外でも確認されます.それを採取して切断標本にしてみると,左のようなもので,実に独特なものです.
下半部は緑色岩礫岩で,礫はそのほぼ全部が緑色岩,少量のチャートを含みます.弱い正級化構造を示していますので,まあタービダイトの一部かと.
しかしその上半部は,通常のQF砂岩からなっており,粒度も組成も,まったく不連続なものになっています.単層上部には明らかな Tcディビジョンがありますが,おそらく未固結時変形で wavy な感じになっています.




下半部の礫質部を薄片にしてみると,ますます面妖というか...QF質の比較的淘汰の良い砂質基質の中に,粒度も粒形も岩質もまったく飛び離れた(弱変成)緑色岩粒子が密集・散在しています.

要するに,異質なものの『合成』からなる,バイモーダル砕屑岩と言ってもよいと思いますが,それはとりもなおさず,『独立した異質な二つの砕屑物供給源が存在した』ということになります.

そのひとつは西方の島弧‐大陸縁ということでよいとして,もう一つは,変成付加体の上昇域ということになるでしょう.後者は,粒子の円磨度から考えると,近傍にあったものと推察されます.そういう構造場のイメージをどう考えればよいか...実に面白いです.

2012/04/11 13:30:29


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