えりも岩盤崩壊
このカテゴリーへの書き込みは本当に久しぶりです.私の教室でこの分野に現在直接かかわっているのは,私と火山関係の中川光弘教授の二人だけなので...なんとなく先行きが思いやられます.研究者としてあまり得しないからかな...?
写真は,2004年2月に“黄金道路”で発生したえりも町宇遠別付近の岩盤崩壊です.この岩盤崩壊は,道路防災の観点から言うと,成功例でもあり,失敗例でもあると思います.
どういうことかというと...まず,崩壊前に前兆の可能性がある小崩壊が発生したため,国道の通行止め処置が取られ,防災関係者による点検が行われました.崩壊は,その通行止め中に発生したため,ある意味で『予知に成功した』わけです.
その反面,通行止め中にこの崖面の横の“監視小屋”で監視中だった開発局職員1名が崩壊に巻き込まれ亡くなられました.監視車輌で仮眠中だった方も1名怪我されています.これは重大な失敗でした.崩壊の数時間前には,道路防災ドクターはじめかなりの人数が覆道上で調査をしていましたので,そのとき崩壊が発生していたら大惨事になるところでした.これは道路防災ドクターである私としても,他人事では済まされません.
ちょっと話を変えると,このえりも崩壊で,『弱変成ホルンフェルスの岩盤特性』というものがクローズアップされました.要するに“硬いけど脆い”ということで...開発局の実験施設でこの岩石試料の破壊実験を私も見学しましたが,降伏に達するかなり前に発生する“ビキッ”という音はかなり印象的でした.
上の写真(ヘリ空撮で撮ったものです)を見ると,人によっては,岩盤崩壊じゃなくて土砂崩壊なんでは?と思うかも.この距離で見ると,たしかにそのようにも見えます.
ところが,実際に近接して見ると...
覆道の天盤をぶち破って流れ込んだ崩壊物ですが,とても土砂崩壊と呼べるものではありませんね...
実はどうでもいい個人的な話ですが,有名な北見北陽の崩壊が発生したとき,私はNHKから取材を受けて,報道ヘリから撮影したビデオを小さな携帯モニターで見せられて“何かコメントを”と迫られたんですよね...私の眼には単なる赤茶けた土砂崩壊にしか見えなかったんですが,後日現場の近接ビデオや写真を見ると,とんでもない,岩盤崩壊でした.そのときは『これだけでは何もコメントできない』と拒否したので放送されることはありませんでしたが,間一髪だった...要するに『遠目で見てあれこれ憶測するのは危険』ということで,道路防災に限らず,露頭というのはなんでもそうだよな...と(汗).
2009/12/04 10:28:31