占冠赤岩トンネル
私がトンネル関係の委員会等に関わることになったのは,道路防災関係からだいぶ遅れて,2002年頃からだったと思います.
上の写真は,その最初のトンネルだったかもしれない,占冠村の道道赤岩トンネルです.これは切羽をワンサイクル掘り終わって,安定のためにセメントを吹き付けているところです.こう言った風景は,単なる野外地質屋の私としては非常に新鮮なもので,掘削時のダイナミックさもあって,当初はけっこう感動しました.
ただまあ,トンネル掘削にとっての野外地質屋というのは,いわば刺身のつまみたいなもので,『地質状況がどうなってもトンネル屋さんは結局は掘り進んでいく』というのが実態かと感じています.
しかしこの赤岩トンネルの場合は,少しだけ状況が異なりました.なにしろ地質状況が実に複雑で...1ヶ月で何mしか進まないような超硬質岩があったかと思うと,塑性変形でずるずるの変形泥質岩(下の先進ボーリングコア参照).
おまけに3階建てくらいになったデュプレックス・ナップ構造とその境界蛇紋岩...だけでは終わらなくて,それに深さ100mに及ぶ深層岩盤すべりが加わってきます.
赤岩トンネルの工事広報ビデオがありましたが,その最初に私が委員会で『あなた方は世界で一番複雑な地質のところにトンネルを作ろうとしているんです』と発言しているシーンが収録されています.まさかビデオに撮られるとは思っていなかったので,汗が噴出しましたが,多少の誇張はあるにせよ,当たらずといえども遠からずだと思います.
で,当然の帰結というかなんと言うか,このトンネルは当初設計から工事予算が何倍かに膨らんでしまい,道議会の予算委員会で問題になったうえにしばらく工事がストップさせられてしまったという顛末でした.
これは皮肉でもなんでもなく,こんなところによく何事もなかったようにトンネルを作れるもんだな...と素直に感心します.このトンネルは道東自動車道へのショートカットとして便利なところにあるので,私もよく利用していますが,ニニウ側から入るたびに,『トンネルの天井は大丈夫か?』とクルマの中から反射的に見上げてしまいます.
最後に余計な話ですが,私はトンネルの掘削現場に入るようになって以来,その(デジカメで撮ったときの)美しさに魅了されています.名づけて,『トンネル・ファンタジー』.綺麗でしょう?
2009/11/17 10:03:14