付加体の内部流動?





これも川村・大津(1997)に書いたことなんですが...ある意味で言うと,“付加体に対する過大評価”なのかもしれない.

松前町の戸長川河口~札前付近のジュラ紀付加体の中を歩いていると,メランジュはもちろんですが,こんな摩訶不思議な構造をけっこう目撃します.
砂泥互層の中に見られる,厚さ数十cm~1 m 程度で成層構造が失われ(て破片状になっ)たシート状の流動部です.Rootless の褶曲構造が見られる場合もあります.それだけだったら,“スランプでしょ?”の一言で片付けられるような気もするんですが...どこか香ばしい.
それにしてもこの写真を撮ったのが1991年...もうちょっと真面目にやっとれば,と自分ながら歯がゆいです.




サンプルを採って切断研磨標本にしてやると,流動部は母岩とクリーンカットというわけではなくて,かなり複雑な境界を持っています.もちろん付加体特有の剪断変形が来ているので,それが重なってより複雑になってしまっていますが.私の眼には,少なくとも上が開放されたスランプ層とはとても思えない.




模式的に柱状図で示すとこんな感じです(川村・大津,1997のカラー版).流動部の上下は破断部で挟まれており,付加体内部の層状流動層なんではないかというのが,私のスペキュレーションです.まあ『これが絶対にスランプ層ではダメだという根拠・証拠があるのかぁ?!』とまで言われると,そんなのはないわけですが.(^^;

いずれにせよ,もっと事例を積み重ねる必要があるわけなのですが.渡島帯は,北海道では唯一,海岸露頭として付加体が分布しているという長所があるので,機会とやる気さえあればかなりの検討成果が期待できそうなところなんですけどね.

2009/11/16 11:24:38


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