白神キノコ岩





これも付加体の面妖さを思い知らせてくれた露頭でした...松前町白神岬から松前街地方面へ少し行くと,白神岬展望広場というものがあります.実はこの展望広場,以前に書いた超レアもの現象,泥注入現象の露頭の上にもろにかぶさって建設されたものです.それを見たときにはわが目を疑いましたが,道路行政が付加体地質研究者の存在なんぞを気にもかけてないという,当たり前の話で(涙).

それはそれとして,この展望広場から松前方面を見ると,海岸に何やらぽっこりと剽軽(ひょうきん)な形をした岩が立っているのが見えます.遠くから見るとおにぎりのようにも見えますが...




近くまで行ってみると,こんな形の露頭で,私はこれを『キノコ岩』と勝手に命名しています.川村・大津(1997)でその概要を報告しています.

露頭真ん中付近に右(南)下がりの不連続面が見えますが,これが断層すべり面で,その下位が泥岩珪長質凝灰岩互層,上位が成層チャートからできています.成層チャートの上位には再び泥岩が載っています
これだけだと,『あぁ...チャートスラブね』で終わってしまうんですが,このキノコ岩の露頭は,もっと奥が深いのでした.




チャートスラブの下底断層と見えた滑り面の上位に,『泥岩凝灰岩互層の切り残し』があるのです(下写真参照).切り残された泥岩凝灰岩互層と成層チャートの境界は,なにやらでこぼこしていて,両者の層理面を切断し,しかも『密着』しています.
つまり,境界断層は実は二次的に形成されたすべり面であって,オリジナルな両者の関係は,少なくとも泥岩凝灰岩互層が半固結(・含水)状態にあった時に構造的に挿入された,と考えられます.
その考えをサポートする現象として,泥岩と互層する凝灰岩層は,膨縮・褶曲・破断・癒着といった著しい未固結時変形(と判断される)構造を示しています.

ちなみに,この成層チャートと同じ産状のチャート岩体から,豊原ほか(1980)は三畳紀のコノドントを報告しています.珪長質凝灰岩からは,残念ながら時代の判明する化石は産出しておらず,保存の悪い放散虫化石がわずかに見られるだけでした.

ということで...チャートスラブと周辺砕屑岩類のオリジナルな(断層・すべり面ではない)関係が見えるというのは,けっこう珍しいのでは?と思います.

2014/01/29 14:02:43


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