上ノ国町小砂子海岸(日方泊岬)





久しぶりにジュラ紀付加体渡島帯の話題です...といっても,かなり古い話です.

このパノラマ写真は,北海道地質百選に載せようと見に行った時のものなので 2009 年6月のものですが,漁港改修で,なんとまったく立ち入りが不可能になっていたのでびっくり.昔は,右手に見える漁港の脇から入れたのですが,現在は,まるで要塞のような防波堤が設置されており,隙はまったくなし,防波堤もとっつきがなく,乗り越えることは不可能です.
もしどうしても入るとすれば,この写真の左側の海岸になんとか降りて,そこから岩場を渡って入れるような気もするんですが,確認してません.今のところは,立ち入りを阻まれてしまったというところです.

で,この露頭がなんで面白いかというと,海洋性岩石が,ほぼ源層序を保ったまま付加体中に孤立岩体として存在している,いわゆる『プロトリス』の典型的な例であるということです.



右の図は,現地質研の大津直さんが卒論で書いたものですが,実によくできたプロトリスの柱状図です.
最上部の石灰岩礫岩からは石炭紀の化石が出ていますので,下位の玄武岩は石炭紀あるいはそれ以前のものということになります.

柱状図から類推できるように,全体としては,海山・海洋島の周辺部の堆積相を示していると解釈されます.

実は,上の改修工事がおこなわれる以前は,このプロトリスの下位に,変形・混在した黒色泥岩が密着~弱すべり関係で接しているのが観察できました.つまり,rootless というわけです.その部分は,改修工事で完全に取り去られてしまいました.
こういうのって,地質露頭のある意味宿命なのかもしれませんが,それにしても残念です.

2013/03/25 14:47:35


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