美瑛コンプレックス・ユニットC
神居古潭帯旭川市オイチャヌンペ川に分布する美瑛コンプレックス...これはある意味私にとって『黒歴史』です.本音を言うとあまり触りたくないんですが...やった(やってしまった)ことはやったことですからね.正直に書くことにします.
この(1989年)ころ,私は渡島帯の経験からなんとなく『付加体も俺らやれるじゃないか』という無根拠な確信?を得てしまい,北海道の他の付加体(帯)に手を伸ばそうと漠然と考えていました.そして,北海道中央部の地質に経験を持っていた幾人かの人たちと,『神居古潭帯団体研究グループ』というグループの立ち上げに参加したわけです.
結果は...付加体のあまりの手ごわさに撥ねつけられてしまった...手に負えなかった,というのが正直なところです.
この仕事の結果は,川村ほか(1998)でなんとか印刷にこぎつけましたが,ナップ構造(オイチャン・ナップ)を認識するという望外のおまけがなかったら,公表にこぎつけることは難しかったと思います.
この論文では,美瑛コンプレックスを,ユニットA・B・C・Dの4ユニットに区分しました.Aがいわゆる神居古潭片岩類で,Dが空知緑色岩相当,Bが変成緑色岩ということになりますが,手ごわかったのはユニットC,緑色岩-砕屑岩混在ユニットでした.
上の図は,ユニットCの一部のルートマップで,混在ユニットのマクロな産状をよくあらわしています.つまり,メランジュではなくて,スラブスタックなんですね.普通の意味での混在岩は(ほとんど)ありません.
右の図は,露頭スケッチですが,これを見ると一見,なんだただのメランジュじゃん,と思うかもしれません.しかしサンプル-薄片オーダーで子細に見ると,むしろ『葉状混在』と呼ぶべきものだということが分かります.また,全体に(緑色岩も)ductility がかなり高いのが特徴です.
左の写真は,ユニットCで詳しく記載できたほぼ唯一の露頭です.そう,露出が案外よくなかったんですよね...Msが破断砕屑岩,Ssが砂岩包有物,Grが緑色岩です.
で,露頭の左半分をよく見てください.緑色岩と砕屑岩(泥岩)が変形細互層のように混ざりまくっています.これが,私が『墨流し構造』と名付けたものです.これについては,別アーティクルで書きます.
普通,メランジュというと,泥岩基質の中に緑色岩包有物(岩塊)が入っているものですが,この葉状混在には基質がありません.というか,基質かという言葉が意味をを持たない構造になっています.
当初この美瑛コンプレックス・ユニットCを調査するにあたって,私が中心になって『メランジュ記載シート』というものを作って,調査メンバーはそれを持ち,それに記入して記載の規格化を図る,という目論見だったのですが,こういった構造によってその目論見は見事に跳ね返されて(敗北して)しまいました.
団研メンバーとの意識の食い違いやその後の発表経過など,思い出すとなかなかつらいものがあります.
2014/02/04 12:47:41