松前町札前の流動岩
渡島帯付加体は,北海道の付加体で唯一に近い『海岸露頭に富んだ付加体』と言えるでしょう.このことが付加体研究者に与えるメリットは計り知れないものがあります.なにしろ付加体内部の構造が,海岸露頭として少なくとも広く二次元的に捉えることができるのですから...
とはいえ,渡島帯付加体は形成後の二次変質・変形も被っているため,なかなか手ごわいです.
上の写真は,そんなメリットによって認識することができたもので,なぜか他の付加体からは報告例がありません(文献見つけてないだけ?).
付加体砕屑岩類中の液状化流動岩というものです.写真の真ん中付近を左右に走る淘汰の悪い泥質砂岩様の部分です.周囲は変形砕屑岩類です.これも,写真日付は1989年9月となっています.遠い日々ですね...(涙) で,その概要は川村・大津(1997)に報告しました.
この流動岩,ぱっと見には『スランプ堆積物』のようにも見えます.このへんが,付加体内部構造の悩ましいところですが,よく観察すると,泥質砂岩部(層理に平行です)は,非常に複雑な内部構造を持っており,周囲の砕屑岩類に lit-per-lit にシル状注入をしています(青矢印).
下はそのサンプルの切断研磨面ですが...見れば見るほど絶望的な気分にもなりますけど,変形砕屑岩類を微妙な凹凸を持った面で切り,その境界は clean-cut ではなく,disintegrated であるというのがポイントです.
これらの一つを柱状図にまとめてみたのが右の図です.液状化部の厚さはせいぜい最大で 1 m 程度で,規模は小さなものです.他の部分では,メランジュ含礫泥岩の直上に存在するものもあり,その形成と何らかの原因があるのではないかという想像も可能です.
この流動現象,付加体内部の水理地質を考える上で非常に興味深いものですが,研究テーマとしては,結局消化不足に終わりました.もっと色々なレベルでの記載ができたのではないかと思われるだけに,残念です.
EDIT: すいません...このネタ,2009年11月に既に書いてました.m(__)m, あぁ既にボケが始まっているのか?! 削除しようかと思いましたが,微妙に違うことを書いているところもあるので,このままにしときます.
2014/01/27 13:52:10